山の文化に根ざす暮らしは、
生きる力を育むことかもしれない
紫波町へ
Iターン
岩手中央森林組合 技師
山口 雄さん
(千葉県出身 / 2009年に移住)
(2015年度取材)
間伐(かんばつ)を通して山の魅力にハマる。
山の仕事を求めて岩手へ
サラリーマン家庭に育ち、山とは無縁の暮らしを送っていた山口雄さんが、初めて岩手を訪れたのは大学2年生の時。母校の國學院(こくがくいん)大学が紫波町(しわちょう)と協働し、『里山づくりプロジェクト』を始めたのがきっかけでした。
これは、間伐作業や民泊体験などを通して地域住民と学生が交流し、森林や地域資源への関心を高めることが目的。その中で間伐体験ツアーに参加した山口さんは、一度で山のおもしろさにハマり、以来、毎年紫波町を訪れるようになりました。
「体を動かして作業するのも好きでしたし、山のことをいろいろ教わるのがとにかく楽しくて」。いつしか、山で働きたい…という思いが強くなった山口さんは、大学卒業後もアルバイトをしながら、森林関係の仕事に就職できる機会を待つことに。そして2009年、伐採(ばっさい)作業員の職を得て、岩手にIターンしました。
数年間作業員として働いた後、現在は岩手中央森林組合の技師となった山口さんは、現場作業を行うための山林調査や作業計画の立案、事務など、様々な業務を担当。「調査データを基に山の持ち主と相談し、作業を行う段取りをするのが主な仕事。山と人をつなぐ橋渡しをしています」。
自然に寄り添い、恵みを生かす。
その豊かさと楽しさを実感する日々
「発見と工夫があることが、山仕事の魅力」という山口さんは、現場作業員の人たちから様々なことを教わっています。「山菜、きのこ、薬草などの知識や使い方、どんな樹がどんなモノづくりに向くのかなど、山のことを学ぶのがとても面白いんです」。先人の知恵を暮らしに生かし、創意工夫(そういくふう)を重ねる地域の人々に、どんな時にも動じない生き抜く強さを感じるといいます。
そんな姿に憧れて、紫波町内に一軒家を借りた山口さんは、昨年念願の薪(まき)ストーブを小屋に設置。オフタイムにはストーブの上で料理を作ったり、お酒を楽しんだり、鉈(なた)を入れるサヤやスノーボードを工作するなど、自分なりの手づくりライフを楽しんでいるのだとか。「子どもが放課後に裏山で遊んでいる感覚に近いかもしれません。みんなにはオタクだっていわれますけどね」と笑います。
地域の草刈りやお祭りなどの行事にも積極的に顔を出すという山口さんは、地域の人たちともすっかり打ち解け、今ではお酒を酌み交わす親しい仲に。「食べ物一つとっても、都会は他に頼らなくては生きていけない場所。でもここに生きる人たちのように、自然の恵みを活かし、自分の手で作り出す暮らしって最高だと思いませんか」。
Q&A
岩手の魅力とは?
今も山の文化が生きていて、自然と共存しながら暮らせるところ。いろいろな知恵を持っている先輩たちがたくさんいることです。地域でも仕事でも教わることが多いですね。
住まいはどうやって探したの?
知り合いの紹介です。薪ストーブのある小屋と母屋に付いている広いベランダがお気に入り。夏の夕暮れに、目の前に広がる葡萄畑を眺めながら、ビールを飲むのが楽しみなんです。
移住希望者へのアドバイスを!
とにかく近所付き合いを大事にして、地域に溶け込む努力をしましょう。また先入観を持たず、何でもやってみることが大切。けっこう色々な発見があるはずですよ。