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岩手県在住作家によるリレー掲載

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第5回 市場通い(2021年11月5日配信)/柏葉幸子

毎週末、盛岡市内から車で三十分ほどの滝沢市にある土日ジャンボ市へ通う。週末二日だけの市場だ。お米から、一週間分の肉、魚、野菜、果物を買い込んでくる。冬になると、テント張りの市場は指先がかじかむほど冷えるが、安いし新鮮なのでここ何十年と通い続けている。

市場のみなさんは、あの冷えこみの中でも、いつも元気で親切だ。天井から社長さん手書きのちらしが何枚もぶら下がる。味のある絵で、見ていて飽きない。豆の煮かたから、めずらしい野菜の紹介、この前はハロウィンのカボチャと昔のローマの暦のことがのっていた。

今の時期は産直なみに、めずらしい茸も並ぶ。香茸、黒皮、銀茸。香茸など、見た目が怖くて、とにかく黒くてグロテスク!お値段もそこそこで、なかなか手が出ない。

香茸ごはんのおいしさを説く人は多い。松茸ごはんなど比べ物にならないのだという。たまに、買ってみる。お店の人は食べ方をていねいに教えてくれる。その通りに調理したつもりなのに、噂ほどおいしくできあがったためしがない。どこが悪い!何が足りない?お日様にだって干したはずなのに!

お手本にと出来上がった香茸ごはんを何度か買って食べてはみたが、そうおいしいとは思えない。私の舌が、おいしさを感じないのだろうか?いつか、おいしいという人にせがんで、作ってもらおうかと思う。

盛岡市内には、盛岡市民の台所といわれる神子田(みこだ)の朝市がある。朝はやく起きたというか、仕事で朝方まで起きていた時など、車で五分ぐらいなので、朝ごはんのおかずや、おやつにするあずき餅を買いに出かける。

神子田の朝市では大根に葉をつけて売っている。大根の葉をこまかく刻んで、ごま油で炒め、お醤油とゴマをちらしたふりかけは、我が家のごはんのお供、不動の一位だ。

九月末からは、山梨を目当てに通う。山梨は神子田でしか私はみかけたことがない。賢治さんのやまなしは十二月なのだ。そんな頃には影もかたちもないはずだ。なぜに十二月?といつも思う。

今年もなんとか手に入れた。毎年、ああ、今年も山梨を煮れる!とうれしくなる。

山梨を白ワインと砂糖で煮る。秋は、砂糖をいろいろとりそろえることになる。鍋から山梨の5センチほどの柄が飛び出して綺麗に並ぶ。煮えてくるとその柄がつくつく上下に動く。新兵さんの行進のようでかわいらしい。秋が来たと思う一瞬だ。

氷砂糖で煮るとさっぱりと上品に、きび砂糖で煮るとこっくりと仕上がる。そのまま食べたり、ゼリーにしたり、今年はこっくりタイプなので、汁を炭酸水で割って飲んだ。

秋になったと思うのは山梨だが、秋も終わりかと思うのはマルメだ。私はマルメと呼んで育ったが、マルメロが正式名称らしい。花梨の一種なのだと思う。花梨ほどの大きさだがでこぼこした形で、いい香りがする。マルメは、市内の八百屋さんや果物屋さんでもよくみかける。十一月頃だろうか。

買ってくるとしばらく部屋へ置いて香りを楽しむ。それから、ザラメ砂糖で煮る。濃いオレンジ色の汁が、秋の終わりの夕焼け色だといつも思う。このマルメを題材に『飛び丸竜の案内人』という物語を書いた。

マルメは喘息持ちの祖父のために祖母がよく煮ていた。自分で煮るようになった頃、あのオレンジ色にどうしてもならなかった。鍋のせいか?砂糖はザラメだぞ!何年もたって、数のせいかと納得した。私はせいぜい五個も煮ればいいところだ。祖母は大きな鍋で二十個ぐらい一度に煮ていた。マルメは切っている間に果肉が赤く変色する。その色だったらしい。五個では変色する前に煮てしまう。今は切ってほったらかして変色させてから煮る。あのオレンジ色の汁を楽しんでいる。

家から歩いて十分ほどの材木町にはよ市(よいち)が毎土曜日にたつ。ふだんは静かな通りが、野菜や地ビールやお惣菜を買い求める人であふれかえる。冬になるとお休みになるので、今からはちょっと寂しい。

これからは、

「大晦日の年取り魚を安いうちに買って冷凍しておく」

という大義名分をかかげて市場へ通う。

沿岸にある宮古市の魚菜市場へも足をのばす。車で二時間かかっていたが、復興支援道路ができあがって今は一時間半だ。

青森の八戸市にある八食センターや館鼻岸壁朝市、秋田市の市民市場へもでかける。

冬眠前の熊のように、食べ物をかきあつめていないと気がすまない。

結局、おいしい物を買うぞ!食べるぞ!という意欲まんまんのごったがえす人ごみが好きなのだと思う。

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