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移住コーディネーター

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化石と琥珀に導かれて
「久慈は自分にとって世界唯一の場所」

久慈市へ
Iターン

久慈琥珀株式会社 博物館グループ

石賀大登さん

(東京都出身/2023年4月に移住)

東京都足立区出身。子どもの頃から恐竜が好きで、TCA東京ECO動物海洋専門学校の恐竜・自然史博物専攻の一期生として入学。在学中に、久慈琥珀博物館・早稲田大学などとの合同チームで行う久慈層群玉川層での発掘調査に参加。2023年4月、久慈琥珀株式会社に入社するため久慈市に移住。(2024年度取材)

久慈で達成したアジア初の快挙

「日本に恐竜化石はない」と考えられていた1978年夏、岩泉町茂師(モシ)で50 cmほどの大きな骨化石が発見されました。それが大型恐竜・マメンチサウルスの近縁であることが分かり、国内で発見された化石としては初めて恐竜と認定。この通称「モシリュウ」の発見は、日本の地質学界の認識をくつがえし、後の全国各地での恐竜化石発見のきっかけとなりました。
モシリュウが見つかった「宮古層群」からやや北部の地層「久慈層群」。久慈市周辺は国内最大の「琥珀」産地として知られ、琥珀を表す「くんのこ」という方言が残るほど、地元では古くから利用され愛されてきました。久慈の琥珀の特徴は、他の海外の産地よりも年代が古いこと。久慈と同じ三大産地に数えられるバルト海やドミニカは新生代の琥珀であることに対し、久慈の琥珀は、恐竜が隆盛を極めた中生代・白亜紀後期のもの。琥珀と一緒に恐竜の化石が見つかる久慈層群は、世界でもまれな大地です。
2023年4月に新卒で久慈琥珀株式会社に入社し、「久慈琥珀博物館」のスタッフとして勤務する石賀大登(いしが だいと)さんは東京都出身。地縁のなかった久慈市を就職先に選んだのは、アジア初となる“ある発見”がきっかけでした。

出身は東京都足立区。子ども時代から好きだったのは、お父さんの影響で小1から始めた野球。そして、5歳のときに映画館で見た「ドラえもん のび太の恐竜2006」がきっかけで夢中になった恐竜。
「子ども心に、のび太が裏山で恐竜の卵を見つけた時の昂ぶりを覚えています。すっかり恐竜好きになり、恐竜図鑑を買ってもらったり、全身骨格が見られる国立科学博物館に父に連れて行ってもらったりするようになりました。」
進路を考えるようになった高校3年生のとき、動物飼育学を専門とする都内の専門学校で恐竜課程が新設されることを知り、一期生として入学。生物の進化過程などを知る自然史や、地質・鉱物を学ぶ地学などの座学に励んだ1年生の終わり、初めての実地調査として久慈琥珀博物館や早稲田大学などとの合同チームで、久慈層群玉川層での2泊3日の発掘調査に参加します。
「久慈に行くのは初めでしたが、母と一緒に朝ドラ『あまちゃん』を観ていたので、舞台となった久慈市が琥珀や化石の産地だと知っていました。『琥珀の勉さん』がいる場所に行けると思って嬉しかったですね。」
はやる気持ちとは裏腹に、専門家たちのチームに入ることにプレッシャーもあったという石賀さん。「サメの歯の化石を一つ見つけて、すっかり満足した」という調査2日目、新たに発掘した石を割ってみると、中には光っていて明らかにエナメル質とわかる1cmに満たない歯化石が。先生に報告すると急に神妙になり、チームはただならぬ雰囲気に。そして一転「恐竜が出たぞ!」「記者会見を開くぞ!」と大騒ぎとなった現場の中で、「見つけた自分自身は嘘だと思ってまったく実感がなかった」と、その当時を振り返ります。
しかし嘘ではなかったと分かったのは、その数カ月後に本当に行われた記者会見。石賀さんが見つけた歯化石は、国内そしてアジアでは今まで報告がなかった獣脚類(肉食恐竜)の一種「リカルドエステシア・ギルモレイ」のものだと発表。地層からは、全部で4種類の肉食恐竜が見つかり、9000万年前の久慈一帯が、多様な肉食恐竜が活動できるほど豊かな生態系や自然環境にあったことを裏付ける貴重な発見となりました。
その後も、石賀さんは調査で何度も久慈へ足を運ぶように。縁を感じて、「久慈琥珀博物館」を運営する久慈琥珀株式会社に入社を決めます。

石賀さんが発見した獣脚類「リカルドエステシア・ギルモレイ」の歯の化石

 

国内唯一の琥珀専門博物館スタッフに

「久慈琥珀博物館」は、国内唯一の琥珀専門博物館。太古の樹木から分泌した樹脂が化石化してできた琥珀を様々な展示で学ぶことができるだけでなく、世界中の琥珀を取り扱う琥珀ショップや、久慈の旬の食材にこだわったレストランも備えています。
石賀さんは主に琥珀採掘体験や化石発掘体験を担当。実際の研究調査も行われている体験場へ参加者を案内し、アイスピックや移植ベラを使用した本格的な体験をレクチャーします。
「あまり興味がなさそうだった子が、だんだんと夢中になって地層に向かう姿を見ると、こちらも嬉しくなります。博物館の中では一番長くお客さまと接する業務です。『楽しかった』『ありがとう』という感想を直接いただけることが、やりがいですね。」
2年目からは、より参加者に親しみを感じてもらおうと、同じ久慈市内の水族館もぐらんぴあの応援団長「さかなクン」にインスピレーションを受けて、恐竜の帽子をかぶった姿で「カセキくん」を名乗ることに。学んできた知識や経験を活かし、参加者に楽しくわかりやすく化石や琥珀の魅力を伝えています。

地元・東京を離れて、久慈で初めての一人暮らし。海・山・川が身近な久慈の自然を楽しみつつも、夜の暗さや人通りの少なさにはまだ寂しさを覚えることも。それでも夜の暗さを逆手にとって始めた楽しみが天体観測。おとなり洋野町にある、日本一星空が見やすい場所にも選ばれた「ひろのまきば天文台」もお気に入りの場所に。
「一億年前に恐竜が生きた証を探す化石発掘と、悠久の彼方の宇宙からやっと届いた光を探す天体観測は、同じような感動があります。天体も、これからもっと勉強したいです。」と笑顔を見せます。
もう一つ慣れないことは冬の寒さ。でも降雪時は、寒さよりも雪の珍しさが勝るので、博物館での雪かきは好きな作業の一つなのだそう。

仕事での新たな目標は、「3Dプリンターでより立体的な仕組みがわかる恐竜の3Dモデルを作る」こと。琥珀と化石が一緒に見つかる久慈層群の魅力を、恐竜を通してもっと伝えたいといいます。
「他の地域では、調査が終わった場所を一般向けの体験場所にしていますが、ここ久慈では、調査前の手付かずの地層で採掘・発掘体験ができます。さらに、土が柔らかいので工具なしで石を手で割ることもでき、子どもでも体験がしやすい場所です。琥珀がたくさん採れるということは、常緑針葉樹が生い茂るほどに水分量が豊富で、豊かな生態系が久慈一帯で発展していた証拠です。誰もが、未発見の新種の第一発見者になれる可能性がある場所なんです。」
もちろん自分だって新種の恐竜を見つけたい、と意気込む石賀さん。「いざ発見した時に命名する学名はいろいろ迷っているんです。でも久慈という地名は入れたいですね。」と、目を輝かせます。

琥珀採掘体験場で体験参加者が採掘した琥珀原石(大きさは拳程の大きさ)

 

琥珀採掘体験場の全体像

Q&A

利用した移住支援制度はありますか?

採用前に会社から、岩手県移住支援金の対象法人で、応募した求人も支給対象となる求人だと教えてもらいました。移住後に久慈市に申請し、移住支援金を給付してもらいました。

体験スタッフ以外にどんなお仕事をしていますか?

専門学校時代に習ったデザインのスキルを活かしてポスターやPOPなどを制作したり、SNSで情報発信をしたりしています。久慈琥珀博物館には「猫館長」がいて、現在の2代目猫館長マイケルは、重さ約8kgという貫禄のある体と顔つきで人気です。この猫館長のことや、博物館の日常をSNSで発信していますので、ぜひご覧ください。

岩手でやってみたいことは?

久慈に来てから野生動物をたくさん見かけるようになって、そこから「ジビエ」が気になるようになりました。自分は動物が苦手なので自らハンターになることは無理そうですが、ハンターさんの狩猟に同行する「狩猟体験ツアー」があるようなので、参加してみたいと思っています。

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