店を持つ夢をかなえるために岩泉へ、
餃子づくりを通して地域の魅力を発信中
岩泉町へ
Iターン
地域おこし協力隊
針生和美さん
(埼玉県出身/2018年に移住)
埼玉県出身。首都圏で飲食店などのアルバイトをしていたが、2018年に岩泉町の地域おこし協力隊に応募し、移住。岩泉町産の龍泉洞黒豚を使った手づくり餃子を開発し、町の特産品として販売している。(2020年度取材)
岩泉の地域おこし協力隊に応募し、
黒豚餃子の開発で起業を果たす
岩泉町のブランド豚・龍泉洞黒豚を使い、一つひとつ丁寧に皮から手づくりする「和み餃子」。ひとくち頬張れば、肉の旨味がジュワッと口の中に広がり、なんとも幸せな気分になります。この餃子を作っているのは、岩泉町の地域おこし協力隊の針生和美さん。道の駅いわいずみやインターネットで販売しているほか、キッチンカーで商店街のスーパーや各地のイベントに出かけ、焼きたてを提供しています。
針生さんが岩泉町に興味を持ったのは、町の移住コーディネーターを務める穴田光宏さんとの出会いがきっかけ。知り合った当時、穴田さんがハムやソーセージを製造していたことから、1週間ほど岩泉町に滞在し、商品づくりの研修をしたことが始まりでした。
それまで、パン屋や喫茶店、ラーメン屋など、飲食店を中心にアルバイトを転々としてきた針生さん。いつか「自分の店を持ちたい」という夢を持っていたものの、実現までの道のりは遠く、険しく…。そんな時に穴田さんから、地域おこし協力隊の誘いを受けたのです。「自分の店を持ちたいと考えていた私にとって、協力隊は起業できるチャンス。餃子なら岩泉の食材を使ってブランド価値を高められるのではないかと思い、キッチンカーで販売する事業計画をまとめたんです」。
2018年6月に赴任すると、町内で人口が最も少ない上有芸地区に移住。餃子の原料となる龍泉洞黒豚について学ぶため、半年間の研修として、養豚農家で豚の世話に携わりました。「育てるプロセスをちゃんと知ってから餃子を作りたかったんです。豚にも個性があることを学び、愛着がわきましたね」。
愛される餃子を目指しながら
人と人をつなぐ場づくりも
「和み餃子」に使う豚肉は、養豚農家から1頭まるごと仕入れ、独自のブレンドで挽肉にします。肉の旨味を生かした黒豚餃子と、その時々の旬の野菜を取り入れた季節限定餃子も販売。最初のスタートは道の駅での冷凍販売でしたが、キッチンカーでの販売を始めると徐々に特産品として知られるようになりました。
「キッチンカーが来た年に、町内全てのイベントに出店したんです。どこに行っても大歓迎で、みんな喜んで餃子を食べてくれたのがうれしかったですね」。
お客様とのふれあいを大事にする「自分の店」を目指していた針生さんにとって、キッチンカーは一番しっくりくる店の形。その一方で、自営業には全部自分で決めなければならない厳しさもあり、責任の重さを感じるといいます。
そんな針生さんの拠り所になっているのが、上有芸地区での暮らし。ご近所さんは6、7人ですが、毎週のように飲み会があり、山菜やキノコなど旬の美味しいものを食べさせてくれるのだとか。「仲良くなるまでは時間がかかるけど、一旦打ち解けたらすごく良くしてくれる。ここには人としての慎みがあり、良い意味で普通でいられる場所だと思います」と、針生さん。
任期が完了した後もここで仕事を続けていく予定で、今後は移住者と地元の人、観光客をつなぐ場として、商店街で定期的にイベントを開きたいと考えています。「イメージは夜市。お酒を飲みながら地元の美味しいものを食べたり、音楽を楽しめるイベントを開こうと仲間と画策中です」。つないでもらった縁を大事にしながら、今度は自分がつなぎ役を担っていく。針生さんたちの楽しい企みが、地域に新たな賑わいをもたらすかもしれません。
Q&A
岩手の好きなところは?
人があまり多くなく、優しい人が多いところ。都会よりずっと住みやすいと感じます。私の住んでいる上有芸地区は山深いところですが、雪が積もった時の山々の風景がハッとするほどきれい。人よりも動物が多いことにも癒されますね。
暮らしで困ったことは?
寒さと暑さです。最初に住んだ家が古かったせいもあるのですが、窓にプチプチを張ったり、隙間風を防いでもあまり効果がなくて…。トイレのタンクの水が毎朝凍るほど冷え込むし、夏は36℃くらいになることも。今は、新しい定住促進住宅に引っ越して快適に暮らしています。
印象に残っている経験は?
猟でしとめた熊の解体に立ち合ったのですが、熊の脂は「新鮮だと生でも食べられるよ」と聞いて驚きました。すし飯に生の脂をのせて食べたんですが、嫌な臭みもなく意外とイケました。これは、なかなかできない経験だったと思います。