“やりたい仕事“が故郷でも叶う
社会の変化がUターンを後押し
盛岡市へ
Uターン
デザイナー兼プロデューサー
山本佐恵さん
(盛岡市出身/2021年に移住)
盛岡市出身。北海道の大学へ進学し、卒業後は都内にあるインターネット業界の大手企業に就職。14年間の東京での生活の後、2021年4月盛岡市にUターン。両親と暮らす自宅にてテレワークで業務を続ける。(2021年度取材)
充実した都会暮らしに大きな変化
仕事の場所を問わない社会へ
新型コロナウイルス感染症の対応策としてテレワークを導入する企業が増える中で、大都市に住居を構えていたオフィスワーカーの地方移住が注目されるようになりました。2021年4月に東京から故郷の盛岡へUターンした山本さんも「テレワーク移住」した一人。そこに求めたのは、ライフキャリアの継続でした。
盛岡市で生まれ育った山本さん。日本舞踊を習ったり、バスケットボールに打ち込んだり、好奇心旺盛でアクティブな山本さんが子ども時代に特に好きだったのは図画工作。印刷業を営む両親の影響で、絵を描いたり工作をしたりするのが日常的だったそうです。
デザイナーを志し、デザインとプログラミングを包括的に学べる北海道の大学に進学。いずれ岩手に帰ってきてほしいという両親の希望を知りつつも、卒業後は上京の道を選びました。
「みんなの生活を変えるような影響力の大きな仕事がしたかったんです。そんな仕事をするためには、東京の大きな会社で働くしかないと思いました。」
100を超えるインターネットサービスを提供する会社で着実にキャリアを重ね、現在は50人のメンバー束ねるチームの総括プロデューサーに。私生活は、横浜市に暮らして趣味の観劇やコンサートを楽しむ、刺激に溢れた都会暮らし。その充実した生活の変化は、新型コロナウイルスの感染拡大から始まりました。
もともと東京五輪の開催中に備えて一斉テレワークの準備を進めていた山本さんの会社では、東京の緊急事態宣言に先んじて2020年3月に全社リモート勤務に移行しました。
在宅勤務でも仕事のパフォーマンスは落ちなかったという山本さん。
「ただ狭いワンルームでしたので、寝具のそばで仕事をするというのはいつまでも慣れませんでした。コロナ禍で外出もほとんどできない中で、高い家賃を支払ってまで都会に住む理由があるのかなと、疑問を持つようになりました。」
会社のテレワーク制度はさらに拡充し、居住地の制限も緩和。午前11時までにオフィスに通える範囲であれば居住できることになり、東京まで新幹線で最短2時間10分の盛岡市も、本社の通勤エリアと認められました。
「東北にもオフィスがあるのですが、そこへの異動はキャリアチェンジと引き換えでした。でも、テレワークなら今の業務を継続できる。“みんなの生活を変える仕事がしたい”という最初の夢が、東京でなく盛岡でも叶えられる社会になったんだと気づいたとき、Uターンの決心がつきました。」
↑ 山本さん撮影(左)岩手県産牡蠣 (右)趣味は日本舞踊
大人になった今こそ楽しむ盛岡暮らし
Uターンをしたからこそ叶った夢も
もともと情報を捕捉していたという「移住支援金制度」。支給の対象要件にテレワーカーが加わるのを待って、2021年4月に盛岡へUターン。18年ぶりに両親と一緒に暮らし始めました。横浜ではコロナ禍での一人暮らしであったため、家族と食事をする温かさに、まずはほっとしたといいます。
「大都市と比べて人口が少ないのはもちろんなんですが、混雑する公共交通機関でなくマイカーでの移動だったり、敷地が広い大きなお店が多く店舗内で密になりにくかったりなど、感染症の流行が抑えられる地方ならではの環境に安心できました。」
お休みの日は、両親と一緒に盛岡近郊の温泉に出かけたり、岩手ならではの新鮮な地場産品をお買い物したりするのがリフレッシュに。
「温泉の楽しさも、生ガキや生ウニのおいしさも、子どものころはその魅力になかなか気づきませんよね。大人になった今だからこそ気づく地元の良さを楽しんでいます。」
そして、Uターンをして叶えた夢がもう一つ。両親とともに暮らすための注文住宅が、この秋に完成しました。
「インスタグラムで見かけて以来、憧れだった地元の工務店に建築をお願いしました。テレワーク用に作った書斎がお気に入りです。移住支援金も家具や家電の購入費に使わせてもらいました。」
Uターンしてから、仕事でも生活でも特に困ったことや苦労したことはないという山本さん。久しぶりの岩手の冬は寒さが少し不安ですが、大好きなウインタースポーツを満喫できるのが今から楽しみだと目を輝かせます。
↑ 山本さん撮影(山本家の愛猫たち)
Q&A
盛岡でお気に入りの場所は?
子どもの頃は家から近かったので、盛岡市中央公民館(愛宕町)によく行っていました。図書室で本を読んだり、庭園を散策したりした思い出があります。中央公民館の庭園は、盛岡城主の南部家が明治維新後に別邸に作った立派な庭園で、桜や紅葉の名所なんですよ。
新築住宅の建築時、利用した制度は?
岩手県の住宅助成制度があることは知っていたのですが、残念ながら我が家の場合は交付要件に当てはまりませんでした。でも、国土交通省の制度で新築住宅建設時にもらえる「グリーン住宅ポイント」というものがあり、東京23区に居住または通勤する人が東京圏外に移住して新築住宅を取得する場合、そのポイントを大幅に加算してもらうことができます。そちらを利用しました。