岩手・タイマグラからの便り
第10回 森の恵みアレコレ。
2025.10.06

森の恵みアレコレ。楽しい!嬉しい!おいしい!季節がスタートしています。秋の実りは大きく分けて3種類。木の実、キノコ、そしてベリーです。
岩手・タイマグラからの便り
この世界のどこか、遠くに暮らすあなたへ。「岩手・タイマグラからの便り」は、いわて暮らしの魅力を紹介するWEBマガジンです。たとえ不便でも、手間がかかっても、自分たちの理想の生き方を実現するために岩手を選んだ安部智穂さん。その日々の様子を、隔月の連載でお届けします。

二百十日を過ぎたら、クルミを拾い始めます。今年は恒例の大風が吹かず、クルミがなかなか落ちなくてヤキモキしました。梢を見上げればリスが軽快に枝から枝へ飛び跳ねて、せっせとクルミを集めています。「どっどど どどうど どどうど どどう 青いくるみも吹きとばせ」風の又三郎を真似て口ずさんでみるも、結局風の吹かぬまま幾日かが過ぎ、いつしかあんなにぶら下がっていたクルミはすっかりなくなっていました。
続いては栗拾い。今年はしっかり栗仕事をしようと決め、予定をあけていました。大豊作!とはいかなかったけれど、渋皮煮や栗餡をたっぷり作ることが出来てホッと一安心。モンブランや栗絞り、栗羊羹など、大好きな栗のお菓子がいっぱい作れるね!
カヤの実やハシバミも収穫し、木の実拾いはお終いとなりました。

お次はキノコです。朝晩の気温が10度前後になると、キノコスイッチが押されポコポコとキノコが出始めます。森のキノコは識別が難しく、取るのは確実に分かる数種類のみ。代わりに原木栽培をしています。マイタケ、シイタケ、ムキタケ。クリタケ、ヒラタケ、キクラゲ、そしてナメコ。あれこれ失敗もしましたが、その失敗から学び、今では上手に栽培できるようになりました。新鮮なキノコはとてもおいしく、そしてとても美しい。秋のお楽しみ!となっています。


そろそろ気になり始めたのは「今年の初霜はいつ頃だろう?」ということ。霜にあたるとヤマブトウやマツブサ、そしてサルナシなどのベリーは甘味を増します。ジャムにするヤマブドウとマツブサは酸味を残したいので、霜が2、3回降りたら収穫し、そのままパクパクと食べるサルナシは、大霜にあたりしっかり甘くなるのを待って収穫します。例年だと、15日前後に初霜が降りるのだけれど、さぁ、今年はどうでしょうか?
畑仕事も終盤です。すっかり勢いを無くしたキュウリ。そろそろ終わりかな? 種取り用に残していた2本のキュウリは、黄色く熟し皮もヒビ割れてきて、そろそろ取っても良さそうです。赤紫蘇は根本から刈り取って最後の収穫です。紫蘇ジュースと塩漬けにしようと思います。青紫蘇は紫蘇巻きと紫蘇味噌にして冷凍。レモングラスは干してお茶にしよう。エゴマもそろそろ収穫かな? 人参、ゴボウ、蒟蒻芋などの根菜類も、霜が降りる前に収穫しなくっちゃ! 季節の進み具合を予測しつつ、野良仕事もラストスパートです。

脱穀するための二股の棒「マドリ」は、サルナシの木から作ることもあるのです。
古より人々の暮らしを支えてきた暦に、二十四節気や七十二侯、そして雑節があります。季節の移り変わりを知る目安にしたり、農作業の目安にしたり、人々の暮らしに欠かせないものでした。
私も、森の恵みの収穫期を予想する為に、そして野良仕事の予定を立てる為に、暦を参考にしています。でも、特にここ数年は、季節の巡りが乱れに乱れて、あれ?あれれ?と思うことが増えました。
季節が健やかに巡ることが、如何に大切でありがたいことか。ようやく誰もが地球の異変を肌で感じ始めているのではないかしら。あれ?おかしいぞ。そうなってからでは遅いのですけれど…。この変化のうねりは、ますますスピードを上げ激しさも増していくに違いない。末恐ろしくなります。

季節に寄り添った暮らしを、ここタイマグラで末永く紡いでいけますように…そう切実に願いながら、秋の一日一日を感謝して過ごしたいと思います。

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