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第13回 同郷(2022年9月)/柏葉幸子

私の『帰命寺横丁の夏』という本が英訳され『Tempul Arrey Summer』という題でアメリカで出版された。アメリカで出版していただけただけで、すごく嬉しかったのだが、バチェルダー賞という賞までいただいた。その授賞式が六月にワシントンであった。

アメリカの出版社がいただく賞なのだが、作者が授賞式に出てもいいらしい。アメリカで授賞式を経験することなど、このチャンスをのがしたらもうない。

担当編集者は、コロナ騒ぎがまだおさまりもしないのに、行くつもりなのかとしぶい顔をしたが、「行くわ!」と押し切った。

話しが進むと、アメリカの出版社はもちろん、作者、翻訳者、それぞれにスピーチもさせてくれるという。遠い日本からはるばる来るのだからという配慮なのだろう。会場のすみっこでこっそり見るつもりでいたのが、こりゃ一大事ということになってしまった。

さて何を着よう。アメリカだから、いくら授賞式でも短パンTシャツ、ビーチサンダルとかもいそうだ。でも、せっかく日本から行くんだし着物がよかろうと思う。

さて、何を話そう。自分のことも少しは紹介しなければいけない。

『日本の岩手から来ました。同郷は、野球の大谷翔平選手と菊地雄星選手です』が、一番わかってもらえそうかと思う。

朝の8時から軽い朝食の出る授賞式で、ビーチサンダルはいなかったものの、素足につっかけという人はいた。

他の受賞者のスピーチを英語がわからないなりに聞いていると、短い時間でも、一回はドッとでもクスリとでも笑いをとっている。ユーモアをまじえなければいけないらしい。

日本の授賞式のように、シーンと静まりかえって咳などしようものなら!という雰囲気ではない。拍手とヒューヒューという声で、頭上でタオルをふりまわしているみたいな騒ぎだ。

日本語でスピーチして英語に訳してもらった。会場が『おおっ』とどよめいた。大谷翔平選手と菊地雄星選手のところだ。笑いはとれなかったが、どよめいたからいいだろうと満足することにした。さしづめ、虎の威を借りる古だぬきといった感じか。同郷のお二人に感謝だった。

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