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第1回 妄想竜の目(2021年7月2日配信)/柏葉幸子

子供の本を書いています。ほとんどがファンタジーです。日常では考えられないようなことを想像するのが楽しくて、それをまことしやかに、あの手この手で子どもたちを、たまに大人も、もしかして本当のことかも?本当だったら楽しいのにと、だまくらかすのが日々の喜びとなっております。

主人公はたいていあまり優秀ではなく、見目麗しくもなく、平凡などこにでもいる少年少女、あるいはおばさん、おばあさん、ということになります。

でも、サブでといいますか、脇役でどうしても出してしまうのが竜です。竜が好きです。私の物語の半分ぐらいが竜の出てくるお話です。翼のある西洋風の竜も、掛け軸に描かれるような日本風の竜も、竜ならなんでもいいようです。

どうして竜が好きなのかわかりません。想像上の動物だからでしょうか?想像のお話にぴったりくるのかもしれません。想像上の生き物ゆえに私が好きに動かせる余地が多分にあるからでしょうか?飛べるから?ちなみに鳥は嫌いです。あの下からあがっていくまぶたというか薄皮というか、名前を知りませんが、あれが苦手です。

どこへ行っても、竜と聞くとどれどれと重いおしりをあげて会いにいきます。お寺の天井にいたり、ふすまや掛け軸の中にいたり、かもいにいることもあります。木彫りだったり、青銅だったり、墨で描かれていたりします。

私はゲン担ぎというわけではないのですが、その時いじっているお話にちなんだ物を見かけると買ってしまいます。そばに置いておくと物語がうまくいくように思えるのです。

人形が多いです。熊がでてくる物語を書いている時に熊のぬぐるみに出会ったので即座に買いました。ぬいぐるみがツキノワグマだったので、物語の熊もツキノワグマにしてしまいました。そんなふうにしてコウモリのぬぐるみ二個、蜘蛛のぬいぐるみ、ヤモリのぬぬいぐるみはマレーシアから、道化師の人形はポーランドのクラコウからつれてきました。

なのに、私の物語にしょっちゅう登場する竜は、ガラス製の置物と土鈴と古い絵皿が一枚あるだけです。竜の物語を書いている時に竜の形の物に出会わないようです。出会っていたなら、私の部屋は竜だらけになっているはずなのです。

何年か前、『闇倉の竜』という物語を書いていました。何頭もの竜が出てくるわけですが、中に隻眼の竜を一頭だしました。ちょうどその頃、八幡平の鏡沼で雪解けの頃ドラゴンアイと呼ばれる自然現象がおこると知りました。雪解けの頃、山の雪解けは五月末から六月初旬だそうでが、沼の氷が解けて大きな瞳のように見えるそうです。岩手生まれ岩手育ちですのに、この年までそんな目があらわれることを知りませんでした。家にとじこもっている私は山へなど登ろうとも思いませんでしたしーーー。

写真をみました。きれいです!すきとおるような青い瞳にみえます。

いつか見に行きたいと思うのです。どれぐらい大きいのだろう?片目の大きさから顔の大きさがわかると思うわけです。顔の大きさがわかれば体なんて岩手山ぐらい大きいのではないかと思うわけです。

きっとあの青い瞳をもつ巨大な竜が地の底に封じ込められているんじゃないか。そんな竜が、なんかのひょうしに、一年に一時期度だけ片目だけが人間の目にふれてしまう。これぞファンタジーだ!ニマニマしてしまいます。

その巨大な竜が、大嵐の雷とともに、いやいや、晴天の穏やかな日に、バリバリと岩や土くれをまきちらして地中からゴジラのような雄叫びをあげて飛び出してくる日があるかもしれないじゃないか。ドキドキします。

竜はどうして地の底ふかく埋められたんだろう。理由を考えるだけで一日楽しく暮らせます。

ドラゴンアイを見に行こうかなと毎年思いながら、妄想だけが膨らんで重いおしりはなかなかあがりません。

また竜が出てくる物語を書き出しています。このドラゴンアイを知っていたら物語の竜の瞳は青だったのに、私の竜たちは緑色の瞳なのです。時期はぴったり!でも今年も妄想だけで終わってしまいそうです。

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