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移住コーディネーター

「海への愛」が定住の決め手に
海洋研究者から兼業漁師へ

大槌町へ
Iターン

ITエンジニア兼漁師

中本健太さん

(埼玉県出身/2015年に移住)

埼玉県出身。2015年、東京大学大学院博士課程中に、同大大気海洋研究所国際沿岸海洋研究センターがある大槌町に移住。2019年博士号取得後、同センターに研究員として勤務。2020年に研究員を辞職し同年4月に町内のIT企業に就職。現在は兼業漁師として海に出る日々を送る。(2021年度取材)

漁終わりに出勤
漁師業とエンジニア職を両立

出勤前の早朝の時間を趣味や勉強などに充てる「朝活」など、ビジネスパーソンの朝の使い方が近年話題になっています。
大槌町のIT企業に勤めるエンジニア・中本さんが、始業の朝8時半より4時間も早起きし、早朝に向かうのは海。2021年春から兼業漁師として、平日でも2日に1回は早朝から出漁する生活を続けています。漁から出荷作業までを2時間ほどで終えて、7時半には一度帰宅。朝食や身支度、そして仮眠を済ませた後は定刻通り出社し、パソコンデスクに座ります。
何よりも海が大好きだという中本さん。
「海に出ること自体がリフレッシュになり、仕事の励みになります。ただ、漁の結果が良くなかったときは落ち込んじゃうので、その日は仕事の進みが良くないかもしれませんね。」と、社長の前でも屈託なく笑う中本さん。その明るさが、中本さんの大槌町での生活を切り開いてきました。

前職は、大槌町赤浜にある東京大学大気海洋研究所国際沿岸海洋研究センターの研究員。東京大学大学院修了後、2015年7月に大槌町に移住しました。
海のない埼玉県さいたま市で生まれ育った中本さんと海の出会いは3歳の時。両親に海釣りに連れて行ってもらったことがきっかけに。「それ以来、海と釣りが大好きになりました。気軽に行ける場所じゃないから、余計に思いが募ったのかもしれません。」
大槌町への移住は、初めての沿岸暮らしであり、一人暮らしでした。「当時、仮設住宅に住んでいたのですが、両隣に住むおじさんたちが気さくに話しかけてくれて、ご近所付き合いが楽しかったですね。岩手の人はシャイで人付き合いが苦手とか言いますが、少なくとも大槌町民に関しては、今でもまったくそうは感じません。」

小さな海洋生物の住処であり、産卵や稚仔魚の成育の場でもある「藻場」を研究対象とし、博士号取得後は特任研究員に。順調に築いてきた海洋研究者としてのキャリアは2019年の冬、突然の病で中断せざるを得なくなります。

 
↑中本さん撮影(左)漁に出る際に見られた朝焼け (右)自分で釣ったヒラメのお寿司

 

海への愛と知識が大槌の新風に

中本さんを襲った病は「肺気胸」。肺から空気が漏れるこの病は、研究には欠かせない潜水を困難にします。
「海に潜らなくても、データ解析や実験で研究に携わり続けることはできます。でも、この海を前にして現場に行かないことは意味がないように思えました。研究はいったん辞める。でも大槌には残る。その決断に、迷いや葛藤はありませんでした。」

研究センターを辞職した翌月には、「通っていた整骨院の柔道整復師さんが、たまたま社長の息子だった」という縁で出会った、漁協・魚市場関連のシステム開発を手掛ける町内のIT企業「JFit」に就職。IT技術により水産業務の効率化を目指すべく新しい仕事に励む一方で、海でも仕事をしたいという思いが強まります。
「漁協の准組合員になるには、“一定期間、漁の手伝いをしていた”という実績が必要です。当時、たまたま近所の方が漁師っぽいなと察していたので、面識は無かったのですが、手伝わせてほしいと直接お願いに行きました。」
突然の申し出に最初こそは驚かれたものの、タコ籠や刺網の手入れなど、漁の手伝いをさせてもらうようになった中本さん。半年が経過した2021年春には、新おおつち漁業協同組合の准組合員に。先輩漁師から、“ちょっと良い自転車”程度の価格で譲ってもらったという小型漁船に、かつて「あぶらめ」(アイナメの大槌での呼び名)を研究していたということから「あぶらめ丸」と名付け、研究員時代に何度も潜った海に、兼業漁師として出漁する日々が始まりました。

「漁師の人手不足や高齢化はどこでも同じで、この吉里吉里(きりきり)地区には50人以上の漁師がいますが、自分より若い漁師は1人だけです。でもライバルがいない分、漁獲量は増えますし、引退する方から資材を安く譲ってもらう機会も多く、新規参入するにはチャンスだと思うんですよね。大槌の海は多様性に富んでいて、自分のように1人でもできる採介藻漁業(岸近くで、道具や素手で水産物を獲る漁業)でも、たくさんの漁獲物があります。兼業でもできるので、挑戦してくれる仲間が増えたら嬉しいですね。」

大槌の豊かな海で、研究者や漁師として中本さんが撮影した魚の写真は、なんと154種。仲買人の“一覧表にしてほしい”という要望に応えて作成した「大槌の海産魚類図鑑」は、クリアファイル400枚がすぐに完売するほど大きな反響があったそうです。
「自分の技術や知識を生かして、大槌の魚文化を盛り上げたい」という中本さん。今日も「あぶらめ丸」に乗って出港する中本さんに、たくさんの追い風が吹いています。

 
(左)漁から戻る中本さん (右)オフィスにて。右上のポスターは中本さんが製作した「大槌の海産魚類図鑑」

 

Q&A

休みの日はどんな風に過ごしていますか?

漁に出るか釣り行くかなので、ほとんど海で過ごしていますね。他の沿岸市町村の海沿いをドライブすることもあります。
気分転換には、ラジオや洋楽が好きなので、エリアフリーで日本全国のラジオ局が聴けるサービス「radiko(ラジコ)」を、とても重宝しています。

漁師としての収入は?どんな漁をしていますか?

漁師としての収入は収入全体の1割程度ですが、ほぼ毎日、獲ったけど出荷できない魚などを食べたり、他の漁師からいただいたりするので、食費は相当節約できています。今はウニやアワビやタコを獲っていますが、将来的にはもっとたくさんのものを獲ってみたいです。自分はシャコが美味しくて大好きなので、獲れると嬉しいですね。

漁協の組合員になるには?

新おおつち漁業協同組合の組合員には、正組合員と准組合員があります。組合員になるためには、漁業に従事したという「実績」が必要で、実績が少なくても加入できるのは准組合員です。ただ、漁の種類や漁業日数に制限があります。
漁師になる前にしっかり技術や知識を習得したいという人のために、岩手県が開講する「いわて水産アカデミー」もあります。1年間、就業準備資金の給付(一定の受給要件を満たす場合)を受けながら、好きな沿岸市町村で実践研修が受けられます。

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