自分には、のんびりゆったりした
時間の流れが心地いい。
盛岡市へ
Uターン
印刷
安藤拓哉さん
(盛岡市出身)
小学校から高校までを盛岡で過ごし、東京の大学に進学しました。卒業後はそのまま医療機器の部品を扱う東京の商社に就職しました。参入障壁も高くて安定性のある会社だったのですが、自分が扱っている商品でさえなかなか見ることができない。これが自分のモチベーションにも影響を与えていました。何かを作っても作ってもなかなか手応えが感じられない。満員電車に揺られながら、仕事をこなしてもこなしても、どんどん埋没していく感じ。もちろん医療に関わる大事な商品ではあるのですが、確かな手応えみたいなものが当時の私には必要でした。そして、いずれ岩手に戻りたいという強い気持ちが徐々に大きくなってきました。三十歳という節目を前にして真剣にUターンを考えるようになりました。
戻ってくるにあたり、妻とは何度も話し合いを重ねました。神奈川県出身の彼女に岩手で暮らすというライフプランはありませんから当然です。そしてこれからの暮らしを考えれば、まず仕事が決まらないことには話が進まない。今働いている吉田印刷に採用されることで、妻も前向きに考えてくれるようになりました。ちなみに妻は東京のデザイン事務所で働いていたのですが、盛岡に来てから、同じ職種の会社に採用され、デザイナーの仕事を続けています。とはいえ、私の両親が岩手、彼女の両親は神奈川にいて、老後の生活のことなど、一緒に向き合わなければならない現実もあります。妻はデザイナーという専門職なので、どこでも仕事ができる。将来的には「二拠点生活」も考えられますし、そういう働き方ができる世の中になってきているのかなと思います。
以前の仕事と印刷の仕事は内容が全然違います。ただ以前の自分が望んでいた「手応え」をしっかり感じられています。お客さんに提案したものが採用されて、それが実際に冊子になって配布されていたり、チラシになって折り込まれていたり、そういうものがやりがいにつながっています。印刷の奥深さに触れることで、もっと学びたいという気持ちがふつふつと湧いてきています。プライベートでは、本来の自分のペースに戻ったという感じ。ゆったりとした時間の流れが心地いい。移住してきた人や旅行で来た人が「盛岡の時間の流れって独特だよね」って言っているのをよく聞きます。それが岩手の良いところだと思いますし、自分に合っているのだと思います。
(2022年度取材)