故郷の近くでテレワークを選択
新しい働き方がもたらした新しい暮らし方
一関市へ
Iターン
ソフトウェア開発者
佐藤慎士さん
(宮城県出身/2021年に移住)
宮城県気仙沼市出身。大学進学のために石川県へ。石川県内の大学院を卒業後、都内にて設計・開発エンジニアとして就職。15年間の東京での生活の後、2021年4月一関市に移住。テレワークで自宅にてソフトウェア開発などを行う。(2021年度取材)
社会の変化の中で見つけた自分の移住スタイル
国の名勝天然記念物に指定される景勝地「厳美渓」。大自然が彫り上げた神秘的な渓谷と深いエメラルドグリーンの水流、四季折々の鮮やかな色彩の景色は訪れる人を魅了します。
一関市に移住した佐藤さんの新居は、その厳美渓から徒歩10分。
「これからは自宅が職場になるので、市街地にこだわらず広い戸建てを選びました。東京にいた時よりも賃料は半分に、広さは倍以上になりました。」
転職ではない、自分なりの移住のスタイルを探していた佐藤さん。それを後押ししたのが、最大100万円が支給される「移住支援金」制度と、新型コロナウイルス感染症の拡大によって急速に進んだ「新しい働き方」でした。
高校卒業後、生まれ育った宮城県気仙沼市を離れて石川県に進学。大学院卒業後は、設計・開発エンジニアとして都内で就職をした佐藤さん。漠然と考えていたUターンを意識しだしたのは東日本大震災津波がきっかけでした。
「気仙沼の実家も、家業の溶接の町工場も、津波ですべて流されてしまいました。その後、無事に再建しましたが、一度失ったことで、自分の中にあった“家業の溶接の技術を残したい”という思いの強さを再確認しました。」
Uターンに際し、転職以外の方法を考えていたという佐藤さん。ふるさと回帰支援センター(有楽町)で相談し、自分の思いを言葉にすることで、移住のビジョンや希望が見えてきたといいます。
そして2020年、新型コロナウイルス感染拡大を受けて、世の中の働き方は大きな変革を迎えます。
「業種上、社内からデータを持ち出せないなどの制約があり、社外での作業は実質不可能でしたが、テレワークの推進でそれらが可能になりました。東京圏から移住するテレワーカーにも支給される“移住支援金”の制度の存在も大きかったです。」
故郷の近くに住み、今の仕事をテレワークで継続する。自分の移住スタイルを見つけた佐藤さんは、奥様からの賛同も得て、移住に踏み切ります。
↑佐藤さん撮影 (左)厳美渓(右)須川高原温泉
20年ぶりの東北での生活
ゆとりと自然に満ちた日々の暮らし
気仙沼市から車で約1時間。新幹線駅があるなど交通の便を考えて、移住先に一関市を選んだ佐藤さん。
約20年ぶりの東北暮らしを、まずは気候の違いで実感したそうです。
「夏は、最高気温の数字だけ見ると、東京と一関ではあまり変わらないのですが、暑さの質が違うんですよね。東京はアスファルトやコンクリートなど人工物からくる暑さなんですが、こっちの自然の中の暑さはそんなに不快感がありませんでした。冷房を使わず、網戸からの自然風だけで過ごす日もありました。」
テレワーク用の部屋の窓からは、瑞々しい青葉越しに、柔らかな日差しが入り込みます。
「家も広く、庭もあるため、在宅ワークの気分転換も家の中で十分にできます。東京から一緒に移住した猫も、庭に出るのが楽しいみたいです。」
往復に1時間以上かかっていた通勤時間は0分に。その分、料理をしたり掃除をしたり、家事に割く時間が増えたそうです。
「でも通勤しない分、運動量も減ってしまいました。近くに栗駒山(須川岳)など山岳が多いので、トレッキングを始めたいなと思っています。」
移住支援金は引っ越しの費用や、自家用車に購入費に補填。実家のある気仙沼や、大船渡や陸前高田などの沿岸部に奥様とドライブに行き、新鮮な海産物を味わうのも、移住後に見つけた楽しみだそうです。
故郷の近くでテレワークをすることで、今までは考えていなかった新しい仕事のビジョンも見えてきたという佐藤さん。
「自分がやっているプログラム開発と、実家でやっているモノづくりを組み合わせて、新しいことができたらいいなと考えています。」
実はロボット製作が長年の趣味だという佐藤さん。実家で造るハードウェアに、自分が作るソフトウェアを組み込んだら、何が造れるのか。佐藤さんが選んだテレワークという新しい働き方は、佐藤さんのこれからの人生に新しい夢ももたらしてくれたようです。
↑ 佐藤さん撮影 (左)テレワーク部屋、(右上)お家でくつろぐ愛猫、(右下)テレワーク部屋から見える風景
Q&A
自宅以外で仕事をすることもありますか?
近くのカフェや、温泉施設でテレワークをすることもあります。市街地にはコワーキングスペースもあるようなので、仲間づくりのためにもいずれ行ってみたいです。
移住支援金の使い道は?
引っ越しの費用に充てたり、自家用車の購入の頭金に使ったりしました。やっぱり都会と違って公共交通手段が少なく、我が家には車は必須でしたので、移住支援金の支給はとても助かりました。
地方でテレワークを始める方にアドバイスを
わからないことがあった時、職場ならすぐ誰かに相談できますが、在宅でテレワークをしていると、ずっと1人で悩み続けたり、、、なんてこともあるので、移住前に、気軽に相談したり話ができたりする仲間との環境作りを整えておくことをお勧めします。