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移住コーディネーター

and iwate

歴史ある温泉郷から
岩手の風土を織り込んだファッションを

花巻市へ
Uターン

KUNEオーナー

菊地央樹さん

(釜石市出身/2021年に移住)

釜石市出身。19歳の時にファッションの仕事をするため大阪に移住。23歳で洋服店を持ち、事業を展開。株式会社VISIONOFFASHION代表取締役として京都と東京にあるショップを経営。2021年に花巻市に家族で移住。2023年4月に、築百年の古民家を改装したセレクトショップ「KUNE」をオープン。(2024年度取材)

東北回帰のきっかけはパリコレクションでの出会い

花巻市の静かな山あいにある、12の温泉が湧く「花巻温泉郷」。その中でも西部の豊沢川沿いの峡谷に位置し、古いところでは開湯から300~400年の歴史を持つと言われる「花巻南温泉郷」は、作家・宮沢賢治が親しんだ温泉として知られ、「鉛温泉」は作品にも登場します。
2023年4月、この花巻南温泉郷で、築百年の古民家を改修したショップ「KUNE(クウネ)」がオープンしました。オーナーは、京都河原町や東京表参道でモードブランドのセレクトショップを経営する菊地さん。“生活が隣にある服屋”を目指したという「KUNE」は、菊地さんの自宅を兼ねた造りになっています。
「意識したのは、京都や盛岡の“町屋”のような、職と住が一体化した空間です。自分が普段飲んでいるお茶を出したり、普段読んでいる本を勧めたり、そんな暮らしの延長で、岩手や花巻の風土にも合うような衣服、器、アイテムを手に取ってもらいたいです。」

菊地さんは釜石市出身。漁師だったおじいさんの道具小屋で使い込まれた漁師道具を見たり、ホームセンターでパーツ類を眺めたりするのが好きだったという子ども時代を経て、5歳上のお兄さんの影響でファッションに興味を持つように。盛岡市で過ごした高校時代には、欲しいファッションアイテムの購入資金を得るため、自分でリメイクした洋服や自作アクセサリーの販売を始めていたそう。19歳の時にファッションの仕事をするため、知人を誘われて大阪へ。バイト先のアパレルショップや、ストリートスナップのWebサイト運営で共に活動する仲間が増えていき、23歳の時に「仲間が集まれる場所を」と、最初のお店となる洋服屋を心斎橋で開業。3店舗にまで増えた大阪のショップは、その後に構えた京都「乙景」に集約。東京表参道にも「CONTEXTTOKYO」をオープンしました。

順調な事業展開の中、新しい店を花巻市に構えることのきっかけになったのは、生地を買い付けにいったパリコレクションでの出来事。憧れのデザイナーと話す機会に恵まれたものの、日本の布文化や生地を敬愛するデザイナーの話に、日本人である自分がついていけなかったと振り返ります。
「もともと流行や最新性に追われるファッションではなく、“民藝品”のように作り手のこだわりや土地の風土が伝わるファッションを扱いたいと考えていました。そして、少ない布地を大切にする裂き織りや、地域資源を生かしたホームスパンなど、東北・岩手の布文化の美しさに改めて気づいたんです。自分自身が岩手に戻って、その文化に触れて、形作っていくことで発信できる地域の美意識があるのではないかと思いました。」

「KUNE」の外観

 

山の暮らしは「日日是好日」

宮沢賢治や高村光太郎の作品が好きだという菊地さんは、山の文化にも惹かれていたことから花巻で物件探しを開始。欄間や梁など家の随所に素晴らしい手仕事が残り、染色作業もできる広い敷地をもつ築百年の古民家は、花巻市の空き家バンクで見つけました。
2021年春に物件を購入し、秋には家族で移住。改修を進めて、2023年春に「KUNE(クウネ)」をオープン。南向きの大きな窓から柔らかく明るい日が差し込む空間で、菊地さんが買い付けたブランドや、自社ブランドの服の販売をしています。
初めて迎えた冬は、トイレの水が凍ってしまったり、薪ストーブの煙突を自分で修理したりと、寒さと雪に翻弄されることもあったものの、お店のコンセプトである「日々是好日」の心で、山の中での毎日を過ごしていると言います。
「大阪や東京も好きですが、忙しくて刺激が強すぎるとも感じていたので、山を見つめながらじっくりと考えを巡らせられるこの場所が自分には合っていると感じます。夜にふと空を見上げて、満月が綺麗だから近くの温泉に入りに行くとか、この場所だから過ごせる“好日”を楽しんでいます。」

「KUNE」では、地元クリエイターたちと共同したイベントも実施。地元作家の個展を開いたり、料理家や珈琲の専門家が季節の味を提供する「クウネ はれのひ」を開催したりしています。岩手のクリエイターたちとの繋がりは、積極的に探したわけではなく、お店に来てくれた人を介して自然と広まっていったという菊地さん。新しく採用した「KUNE」の男性スタッフも、お店を知り、ここで働きたいと訪ねてきた地元の青年なのだそう。「彼はファッションが好きで、でもそれを仕事とするために地元を離れる必要はないと感じていたようです。場所を選ばずにやりたい仕事ができると思える時代になっているなら、良いことですね。」と笑顔を見せます。
菊地さんに協力するのはクリエイター仲間だけでなく、花巻の人々や、集落のみなさんの“歓迎”も力になっています。特に集落のみなさんには、冬には除雪車を使って家の周りの雪をかき分けたり、採れた野菜や果物をお裾分けしてくれたりと、集落全体で菊地家の2人の子どもたちを見守ってくれる温かさを感じていると言います。

飛行機・新幹線・高速道路など主要な交通機関が充実しているのも花巻に暮らしやすさを感じているポイント。ショップオーナーとして、ブランドの買い付けや生地の勉強のためにいろいろな土地に足を運びたいと考える一方で、これからも花巻で暮らし、子育てをしていくという気持ちはきっと変わらないという菊地さん。
「畑で作物を育てたり、樹皮で籠を編んだり、生地を織ったりと、岩手には職人でなくても生きる上で役立つ高い技術を持っている方が多いです。子どもたちもその技術に触れて、大人になったときに、雇ったり雇われたりするだけが働き方の選択肢ではないと思ってもらえたらいいですね。できれば自分の今の仕事が子どもたちにとって、継ぐ価値があるものと思ってもらえるような魅力的なものであり続けられたら嬉しいです。」

「KUNE」の内観

Q&A

お店の名前「KUNE(クウネ)」の由来は?

漢字の「食寝」をあてていますが、元の由来は、エスペラント語で“一緒に”と言う意味です。エスペラント語は言語の壁をなくすことを目的にして作られた人工国際語で、宮沢賢治も独習していたようで、「イーハトーブ」はエスペラント語を合成して作られた造語と言われています。花巻市内では、エスペラント語が使われた看板やオブジェを見かけることがありますよ。

久しぶりに岩手にUターンして驚いたことは?

お米や野菜などの食材がおいしいです。生産者さんが身近なので、安心・安全な作物にかける熱意に触れる機会も多くて、子どもたちの食育にも良い環境だと思います。今年は、集落で使われていなかった田んぼに水が引かれ、12年ぶりに米作りが行われました。私たち家族も田植えなどに参加しました。

利用した移住支援制度はありますか?

県外から転入し、空き家バンクを購入した人に給付される「花巻市定住促進住宅取得等補助金」があって、これは市内事業者にお願いしたリフォームや、必要な家具・家電の購入などに上限200万円までを補助してもらえます。他にも、「花巻市若者世代等空き家取得奨励金等」や「花巻市子育て世帯住宅取得奨励金」などがあります。花巻市の住宅取得支援は手厚くてありがたかったです。

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