“岩手”との思いがけない出会い
理想の田舎暮らしを求めて岩手山麓へ
八幡平市へ
Iターン
IT・Web関係
大槻晃弘さん
(京都府出身/2023年10月に移住)
京都府京都市出身。京都市消防局勤務を経て、30歳のときに上京、都内のWeb系IT企業に就職。2022年に八幡平市にある岩手山を眺望できる土地を気に入り、移住準備を開始。2023年10月、家の完成と共に夫婦で八幡平市に移住。リモートワークをしながら、八幡平の自然の暮らしを楽しむ。(2024年度取材)
出会いが導いたスピード移住
世界屈指のシルキースノーで知られる安比高原。スキーリゾート地として知られるこのエリアは、近年、外資系リゾートホテルのリブランド開業や、英国ロンドンにある名門私立学校「ハロウインターナショナルスクール安比ジャパン」の開校など、1万人規模の定住者を目指すグローバルな街づくりが進んでいます。誘致のアピールポイントは八幡平市の豊かな自然環境。安比やその南側に位置する岩手山麓エリアは、大パノラマの景観と良質な温泉で以前から別荘地として人気を集め、現在も移住者が増えているエリアです。
その岩手山麓で、目の前に岩手山を望む素晴らしい眺望の土地を購入した大槻さんは東京からの移住者。土地の広さは2万平米、サッカーコート3面分に相当します。この広い敷地に理想の田舎暮らしを描き、1年前に移住してきました。
京都市で生まれ育ち、大学卒業後は学生時代にラグビーで培った体躯を活かして京都市消防局所属の消防士に。責任ある仕事に打ち込むかたわらで、読書が好きな子ども時代から興味があったライティングの仕事に心が惹かれるように。30歳のとき、友人に紹介された東京のWeb系IT企業で働くため、上京の道を選びます。
知識ゼロからスタートした業種のため、業務以外でも積極的に自主勉強に励んだという大槻さん。就職から6年が経ちコロナ禍にあった2022年、オンラインで開催された社会人向けセミナーに参加。“自分の未来のビジョン”を語るグループディスカッションで、岩手から参加する看護師の女性が話す未来像に大きく心を揺さぶられます。
「乗馬もできる広い敷地のある田舎に暮らし、野菜や花を育てて、お店を持つ――。彼女が理想とする暮らしは、自分が思い描いていた暮らしと驚くほど似ていました。私自身は京都市育ちですが、両親の実家は京都北部の田舎にあります。田植えをしたり餅つきをしたり、帰省で過ごした楽しい日々が忘れられなくて、いつかは田舎で暮らしたいという思いをずっと温めていました。」
父方の実家を手放した時、田舎を失ってしまったような喪失感が大きかったという大槻さん。東京での暮らしも、都会は仕事をするには適しているが家族と暮らす場所ではないと、その思いが募っていったといいます。
セミナーに参加していた岩手の女性と田舎暮らしの話で意気投合。すでに岩手で土地探しを始めているという女性と一緒に候補地を見るために初めて岩手を訪問。山に囲まれても広がりを感じる岩手の風景に、初めて来たのに不思議と懐かしさを覚えたと振り返ります。最近売地に出たばかりと不動産会社に紹介された場所こそが、現在暮らす2万平米の山あいの土地。長年の夢だった田舎暮らしを叶えるために、運命的ともいえるスピード感で出会ったパートナーと場所。岩手山を望むその素晴らしい眺望に背中を押され、大槻さんは岩手への移住を決断します。
岩手山麓でリモートワーク
ペットたちとのびのびした暮らし
結婚後、家の完成を待って都内でしばらく生活した後、2023年10月に夫婦で移住。共に暮らす家族は、奥さんの希望で迎えた保護猫2匹と、大槻さんの希望で迎えた保護犬の秋田犬。夫婦でこだわったという三角大屋根が印象的な白い家は、パノラマの山々を贅沢に借景し、絵画のような美しさで佇みます。
大槻さんは東京の会社に在籍したままリモートワークで仕事を継続。最初こそは、書斎に入ってくる猫や犬たちに邪魔されたり、気持ちの切り替えが難しかったりと、仕事のリズムをつかむのが難しかったと振り返ります。
「会社にいれば誰かと話すことでできた気分転換が、リモートワークでは難しくなりました。でも今では、昼休みに料理をしたり、犬の散歩にでかけたりと、リモートワークならではの方法でリフレッシュしています。犬の散歩は車をだして、『岩手県民の森』まで出かけることもあります。」
往復1時間かけていた通勤がなくなり、空いた時間はWeb制作などの副業にあてることも。休日のレジャーの楽しみは、ウィンターシーズンに抜群な雪質を楽しめるスキー場通い。温泉好きなので、森林浴と温泉浴を楽しめる八幡平温泉郷にもよく通っているとお話しします。
山あいの広い土地での暮らしは、自宅敷地内で山菜が収穫できたり、ペットとのびのびと暮らしたりという喜びがある一方で、草刈や除雪という日常のメンテナンスの大変さも。慣れない草刈機や除雪機の扱い方は、ご近所の方に教えていただいたこともあるという大槻さん。大槻さん自身も地域に貢献できることがあればと、消防士の経験を活かして消防団に入団。またご近所の先輩移住者夫婦がドッグリゾートをオープンする際は施設のWeb制作を請け負うなど、培ってきた経験を役立てながら、新しい場所での交友関係を広げています。
現在、大槻さんはリモートワーク、奥さんは看護師と今までの仕事を継続中。しかし、理想の田舎暮らしのビジョンは希望通りの土地を手にしたことで、より鮮やかになっていきます。
「“乗馬をするために馬を飼い、花畑を作って、それを楽しめる飲食店を開きたい”、というのは変わりませんが、さらに秋田犬を飼ったことで大型犬専用のドッグランも作りたくなりましたし、除草のためにヤギを飼いたいというという目標もできました。野菜を育てて、敷地内で小さな産直もやってみたいです。いつかはそれらを本業にできたらいいですね。」
地域とのつながりを深めながら、八幡平の土地に根を張り始めた大槻さん。この場所で思いが花開くときは、そう遠くないかもしれません。
Q&A
八幡平市の好きな季節は?
どの季節も素晴らしいですが、やはり春ですね。雪解けとともに草が芽吹く様子は美しいだけでなく、冬を乗り越えた喜びも感じられて、季節の移り変わりを肌で実感します。山のごちそうである山菜は自宅敷地内でも採ることができます。実は今までほとんど食べたことがなくて、自生しているのを見たのも初めてでした。妻が天ぷらに調理してくれた「タラの芽」や「ばっけ(ふきのとう)」がおいしかったです。
日用品の買い物はどうしていますか?
スーパーやコンビニは近いところで車で20分ほどかかるので、食料品などは週一回の買い出しでまとめ買いをしています。お肉は冷凍販売しているものを選ぶなど、長期保存しやすい工夫をしています。
利用した移住支援制度はありますか?
リモートワーカーも支給対象となる「岩手県移住支援金」を受給しました。除雪機や草刈機など、この土地で暮らすために購入しなければならないものも多かったので、それらの購入費に充てました。